2021-01-22

40歳からの再スタート−「平成着物図鑑」までのおはなし①

この本は河出書房新社から出版された私の1冊目の本です。おかげさまで、現在も文筆業を続けていますが、すべては、この本から始まったのです。この本についてのおはなしの前に、この本を出すまでのお話を少ししたいと思います。

40歳からの再スタート

あまりお話したことがないので、私は最初からずっと文筆家だったと思われがちなのですが、私がライターになったのは、まさに偶然。
かいつまんでお話すると(たぶん、かいつまんでも長くなりそう)、20代は貿易会社のアメリカ支社で駐在員、30歳で結婚するので退社・帰国・結婚。専業主婦になりました。専業主婦が合わず病む(笑)。ウェブデザイナーの学校に行き、その後、妊娠・出産。初めての育児に悪戦苦闘している頃、知人が夕刊紙の編プロがライター見習いを探していると誘ってくれて、夕刊フジのライター見習いを始めたのが・・・たしか、33歳くらいだったかな。この友人が経験皆無の私に声をかけてくれていなかったら、今頃、何をしていただろう?想像もつかないです。人生って本当にわからないです。

夕刊紙の仕事をメインに、新たな編集ライター仲間ができて、同人誌を作ったり、育児本をみんなで共著で出版したり、グルメ雑誌や女性雑誌などのライターをしていました。少食の私がグルメ雑誌の中華街めぐりの取材は拷問でしたが、良い思い出です(笑)。

その頃、たくさんのポータルサイトやショッピングサイトができ始めた時期で、育児サイト、女性サイトなどの立ち上げ、リニューアルなどコンテンツ編集の仕事を始めます。この時は制作会社に契約社員として勤めていました。ある女性サイトの編集長をしていた時、ウェブの仕事は本当に昼も夜もなく忙しく、あるモノにさらに付け足していくため「完成」と言う達成感が得られず、ひたすら走り続け、何か自分の中の何かがひたすら削り取られていく消耗感。心も身体も疲れ果て、ある時、保育園に娘を迎えに行ったら、先生と最後一人残った娘の姿を見て「何をやってるんだろう、私」と言う気持ちになり、娘の手を引いて歩いていると涙が溢れて止まらなくなってしまいました。そして、一切の仕事を辞めます。あの時の心境は「指一本も動かせないほど疲れてしまった」です。

それから半年間、身体を休め、心を休め、本を読んだり、映画を観たり、すっかり枯渇してしまった自分にインプットをし、あらためて「何がやりたいのか」考えました。出した答えが「丁寧にモノを作り、形に残るモノを作りたい」でした。それが私にとっては「本作り」でした。そして、どうせ作るなら自分が好きな分野、楽しいと思えるテーマにしたいと思い、当時はまだ30、40代のための着物本がなかったので、着物の本を作りたいと思うようになり企画書を書きます。

とはいえ、記名もない1ライターだった私なので、出版社にツテがあるわけでもなく、本を出せる根拠など皆無。企画書を書き、そこから出版社にあたって砕けろ営業が始まります。この営業についても書くと長い長いお話になるので詳しくはまたの機会にしますが、悪戦苦闘の末、思いがけない出会いがあり、この「平成着物図鑑」を作ることになります。

そう、それが40歳の再スタートだったのです。

いくつになっても迷うし、いくつになってもスタートするのに遅くないです。それよりも「何がしたいのか」を見つけることの方が難しいかもしれません。年齢を重ねるごとに背負う荷物も自分を縛りつける役割も増えます。「何がしたいのか」を考える前に「何ができるのか」を考えてしまいがちです。それゆえに素直に自分と向き合えないことも。そして続けてきたことを辞めることもなかなか難しいことです。でも、もし見つけられたら、やるべき。やってみるべき。そう思います。

超かいつまんで「平成着物図鑑」に至るまでのお話をしましたが、かいつまみずぎかな。専業主婦の苦悩とか、幼子を抱えて仕事を見つけた話とか、突撃営業で撃沈話とか、それぞれ話せば長いので、またの機会に。

次は「平成着物図鑑」の制作のお話をしたいと思います。

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